皆さんは、「京ことば」にどんな印象をお持ちでしょうか。
やさしくてはんなり？――いいえ、「意地悪そう」「回りくどい」「本音が見えない」など、ネガティブな印象を抱いている方も少なくないかもしれません。
実は私自身、京都府南部で育ちましたが、京都市内に暮らす方たちの言い回しに戸惑いや恐れを感じたことがありました。
たとえば、「よろしおすなぁ」と言われても、それが本心からの賞賛なのか、皮肉なのか、聞き手には判断しづらい。
そんな曖昧さに、距離や冷たさを感じてしまうのも無理はありません。
京ことばの本質は「衝突を避ける知恵」
けれど、京ことばの本質は、決して冷たさではなく――「衝突を避けるための知恵」なのです。
京都は、長く都として栄えてきた場所。平安貴族たちが暮らした世界では、むき出しの感情をぶつけるのではなく、あくまで「和を乱さず、角を立てず」相手に伝える術が求められてきました。
直接的な言い回しは避け、やんわりと遠回しに。そうすることで、相手の立場やメンツを守りつつも、言いたいことは伝える。
それが、京ことばに受け継がれるコミュニケーションの知恵だったのです。
たとえば、「ちょっと考えはるとよろしいかもしれまへんなぁ」と言えば、単なる「NO」とは違い、相手に決定権を残しながらやんわり否定ができます。
このように、争いを未然に防ぐ“婉曲話法”の文化こそ、京ことばの真髄なのです。
現代こそ必要な「ことばの緩衝材」
では、現代はどうでしょうか？
SNSが広がり、誰もが世界に向けて発言できるようになった一方で、言葉による衝突や誹謗中傷は後を絶ちません。
「正論」や「本音」が、ナイフのように鋭く人を傷つけてしまう場面もあります。
だからこそ、いま改めて「京ことば」のようなやさしい言葉の使い方を見直すべきではないでしょうか。
いにしえの都に根付いた知恵を、現代のネット社会で活かす。
それは、単なる言葉の問題ではなく、「人と人とが心地よく共に生きるための知恵」でもあるのです。
「みそぎ変換」の意義
そんな思いから生まれたのがこの「みそぎ変換」です。
言葉にトゲがあると気づいたとき、ほんの少し立ち止まり、
やさしい言葉に変えてみる――
京ことばの知恵を借りて、あなたの言葉を“禊ぎ”、
もっとあたたかく、やさしい世界へつなげていく。
それが、このサイトの願いです。
